月とスッポン      ありのままは難しい
「確かに」
「広大な寺領・神領を経営する立場になれば、武装することは当然な事だとも言えます。盜賊のみならず、国府や権門・在地領主らの武裝勢力など、さまざまな勢力との紛争を抱えることになりますからね」

「争いは向こうからやってくるってやつですか?」
「はい。
《平安時代になると境内と荘園の治安維持や他勢力への対抗のため、仏教を守るためには、仏教を学んでも暴力的で危険な者はいるから、指導しながら組織化した方がまだよい、とか。
他にも様々な要因が挙げられますが、いずれにせよ名目上は仏法を守るため僧兵が組織されます。他の荘園と同様に寺院・神社も武装する必要があった。
始まりは正当な理由だった。

ですが時が流れるにつれ強力な武装集団へとなり、宗教的権威を背景とする強訴は僧兵の武力以上の威力をもち、しばしば朝廷や院を屈服させることによって、国府や他領との紛争を自らに有利に解決させるようになります。また寺社同士の抗争も激しく、しばしば焼き討ちも行われます》」

大黒堂へ行って、萬拝堂の大きな数珠を触りながら時計回りに回って、小腹が空いたと比叡山名物の蕎麦を食べようと隣にある一隅会館の地下へと向かっている間も、大河の熱弁は続く。

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