月とスッポン      ありのままは難しい
琵琶湖の向こうにある景色を眺める。

「片手で数え終えました。その数を見て思ったんです。私が死ねって思った人の方が、悲しむ人が多いだろうなって。
そう思ったら、相手が消えるより自分が消えた方が良いんだろうなぁって。そう思ったら、どうでも良くなりました」
「そうですか」

大河はそれ以上何の言わなかった。
空気が重くなる。それは今回の旅には必要ない。

気分を切り替えよう。
大きく伸びをして、残っていた梵字ラテを飲み切り席を立つ。

「さぁ、まだまだ回るところがあるので行きますよ」

私の気持ちを悟った大河も

「そうですね。このペースでは日が暮れてしまいます」
「誰のせいだよ」

「私ですか」と笑いながら、会館を後に東塔へと向かう。
人が増えてきたって事は、太陽の位置で大まかな時間を確認する。

山の中だというのに、気温がグッと上がった気がする。汗が気になる所だが、繋いだ手は離してくれそうにない。

「《阿弥陀堂は、1937年今から約90年ほど前に、比叡山開創1150年大法要を記念して建立された檀信徒の先祖回向の道場です。
お経などをあげることで積んだ【徳】を故人に回し、故人が浄土へ行けるようにすると同時に、お経を唱えた人にも浄土への道を開く場所だそうです》」
「そして後ろに見えるのが東塔ですね」

熱心な仏教徒ではないので、挨拶だけして阿弥陀堂を終え、東塔を見上げる。


< 41 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop