月とスッポン ありのままは難しい
「つまり、大変だからその前にもっと大変なことをさせて、それが出来たんだからこれも出来るって事?」
「何か大きく違う気もしますが、その思いもあるかもしれません」
違うのか?
「《最澄の夢は親鸞、道元、日蓮などとなって、日本各地に羽ばたいています。
そして、今も浄土院では、【侍真】という修行僧が最澄の霊前につかえています。最澄の精神は、つねに純粋だったそうです。侍真は、十二年間山にこもり、外界と隔絶された環境で最澄の純粋な教えを実践しています。
純粋だからこそ江戸時代の元禄の頃から400年ほどの間、途切れずに続いているのかもしれません》」
「純粋な思いねぇ。そこが大事って言われると、私には無理だ。それこそ、生まれ変わらんとだ」
「そう簡単に今の人生を終わらせないでください」
苦笑いをしながら大河は言う。
「終わらせる気はないんですけどね。まだ行きたい所があるし、海の子供も抱っこしたいし」
何か言いたそうな顔をする大河は放っておく。
「まぁ、次生まれ変わったらお姉様になって、自分の欲望のまま生きると決めているので、その次ぐらいには侍真僧になってもいいかなぁ」
「侍真僧になるにはまだまだ先になりそうですね」
「あと150年は見て欲しいですね」
「先の長い話ですね。では、現在励んでいらっしゃる僧侶に敬意を払いながら、我々は参拝を楽しませて頂きましょう」