月とスッポン ありのままは難しい
始めの分かれ道に辿り着き、気分を一新、釈迦堂に向かって坂を下っていく。
浄土院からの坂を思えば、なんと緩やかで歩きやすいのだろう。
目の前に見えてくる建物を目指し歩けば、見事な左右対称なお堂が現れる。
「この間を通れるってなんか凄い」
と妙に感動しながら、しっかりと左右対称になり様に写真に収める。
「《1595年 文禄4年に建立され、そして国の重要文化財に指定されています。正面向かって左側が【阿弥陀如来】を本尊とする【常行堂】。そして右が【普賢菩薩】を本尊とする【法華堂】です。
2つ同じ形をしたお堂が唐破風屋根の渡り廊下でつながれているため、見事なシンメトリーになっていますね》」
左右対称ではなく、シンメトリー。
そっちの方がかっこいい。
そう思うながら「シンメトリー」と何度か小さく呟く。
クッと小さく笑う声が聞こえる。
「《このお堂にはあちらの廊下に肩を入れて弁慶が担ったと伝えられています。
そこから全体の形が天秤棒に似ているところから【担い堂】の呼び名が生まれ、2つのお堂の総称として【にない堂】と呼ばれる様になったそうです》」
「本当に?持ち上げれないでしょ、普通」
「そこは触れてはいけません」
大河に力強く言われた。
「それだけ力強かったと言う事です」
「そう言うことにしておきます。弁慶の話は長そうなので」
「そうですね。源義経と出会った京都、最後迎えた岩手平泉。弁慶の話はその時に取っておきましょう」
自然と眉間に皺がよる。
嬉しそうな顔をしている大河に向かい「そうですね」と棒読みするのが私の精一杯の優しさだとわかってほしい。