月とスッポン ありのままは難しい
なんて恵まれているのだろうか。
「いや、運が良いとは思うけど、もっと幸せになっても良いとも思うわよ」
お姉様は残念な子を見るような目で私を見ているのが、ちょっと解せないけれど、そんなお姉様も美しい。
眼福です。
「今、平穏な日々を送らせて頂いて十分に幸せなんです。
よくならなくてもいいので、これ以下には絶対になりたくないんです」
戻りたくない。
そう、私は今以下の生活に戻りたくないんだ。
お姉様と話をしていると自分が見えてくる。それは人と話をするせいか、お姉様が持つ力なのか?
私の誓いなどお構いなしに、お姉さんが私の顔に化粧を施していく。
「顔色をよく見せるにはベースメイクを怠っちゃダメ」
などお姉さんもお姉様がいる事などお構いなしのようだ。
「まぁいいわ。茜、とにかくあなたは深く考えすぎだと思うわ」
お姉様もお構いなしに
「人生は“ケ・セラ・セラ”なのよ」
と力強く言う。
ケ・セラ・セラ?
「緑の林檎?」
「ドリス・デイを知らない?」
「“ケ・セラ・セラ”と言えば今は緑の林檎でしょ。私だって、ドリス・デイって聞いて誰って聞き返すわよ」