月とスッポン      ありのままは難しい
注文を取りにきた店員さんに話を振ってみる。

「まぁ、そうですね」と苦笑いされた。
顔面偏差値の高い人間たちの頭の上にはてなマークが見える。

「イケメン無罪」

そう呟けば「顔が良く罪は罪だと思いますが」
と真面目に答えられる。

「そう言う意味じゃなくて、男女問わず顔が良いと他者からの好感度が高いわけ。だから、嬉しいと思う行動も、好感度が低い顔が悪い人間がやればなんらかのハラスメントに該当するって事」
「それは怖いですね」

こいつ絶対に怖いと思っていない。

「今のご時世、ハラスメントは怖いねん」
「怖いです」

大の大人が恐怖で慄かないでほしいのだが、常におじさま方に囲まれて仕事をしている私にはその気持ちがなんとなくわかる。気がする。

「どんな相手でも気難しいおっさんだと思って接すればいいんじゃないですか?」

適当な慰め方をしながら、ハンバーグを食べる。

「茜は大丈夫なのですか?」
「何がですか?」

「嫌な思いとかしていませんか?」
「あぁ、カスハラ的な?この仕事をしていれば少なからず何かありますよ。でも、これで時給が発生してお金が貰えるのなら、まぁ我慢しましょう的なレベルですかね?今の店では」
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