あの夏、君と最初で最後の恋をした

「おはよう友花、よく眠れた?」

朝、目が覚めてリビングにいくと先に起きていた颯太がいつもの笑顔で迎えてくれた。

「おはよう、颯太。
あれからぐっすり」

2人で蛍を見た後、安心感もあったのか中々寝付けなかったのが嘘みたいに心地良い位によく眠れた。
と言うか、寝過ごしてしまって目が覚めたら時計は9時を回っていた。

「疲れもあったんだよ。
顔洗っておいで。
その後一緒に朝ご飯作ろう」

「うん」

颯太に言われるがままにリビングから出て洗面所へ向かい、顔を洗って着替えを済ませる。

身支度を終えて改めてリビングに入ると、颯太はエプロンを着けてキッチンに立っていた。

私もエプロンを着けて颯太の隣に立つ。

「何作るの?」

「朝だし簡単な物だよ。
卵は目玉焼き?卵焼き?」

「目玉焼き!
半熟にしてね!」

「じゃあ半熟にするコツを教えるから、友花が作ってみようか」

「え?私?」

思いも寄らない颯太の言葉に変な声を上げてしまう。

自慢じゃないけれど私は料理が苦手だ。
だけど颯太は料理も器用にこなすから、一緒に料理する時は私はお皿を出したり洗い物をしたりで私がメインで作る事はなかった。
洗い物だって結局颯太が手伝ってくれるから1人でする事もなかったし。

「颯太が作る方が早いし美味しいじゃん」

「僕は友花が作った目玉焼きが食べたいな」

「そ、そう?」

颯太が食べたいなら作ろうかな、
なんて我ながらどれだけ単純なんだと思いながらも卵を用意する。

「僕はサラダを作るね、友花は目玉焼きとベーコン焼いてくれるかな?」

「了解ー」

いつも颯太が立つコンロの前に私が立ち、
颯太は流しの近くで野菜をちぎりお皿に盛り付けている。

「そう、お水を入れて蓋をして」

「はーい」

目玉焼きとか簡単な物でも颯太が食べてくれるなら気合いを入れて作ろう。
でも、半熟に作るって意外に面倒くさいんだな。
ただフライパンに卵落とすだけじゃダメなんだ。



目玉焼きにカリカリに焼いたベーコン、
色鮮やかなサラダ、
こんがりと焼いた食パンにバターに苺ジャム、
冷たいカフェオレがテーブルに並ぶ。

「いただきます!」

2人で手を合わせて声を上げる。

目玉焼きを口に運ぶ颯太をドキドキしながら見つめる。

「美味しいよ、それにちゃんと半熟」

「ほ、本当!?」

「うん、美味しい」

「良かったー」

ホッとして私も目玉焼きを口に運ぶ。

たかが目玉焼きひとつで大袈裟だけれど、
いつも颯太が作ってくれた目玉焼きを食べるだけだった私が、
今日は自分が作って颯太に食べてもらってる、
それが何だかくすぐったくて、嬉しかった。


「今日は何しよっか?」

食べながら今日の計画を立てる。
海にもいきたいし、
夜は花火もしたい。

「そうだね、まずは友花は宿題をしようか」

「えー、宿題?」

「早目にやらないと、後になって後悔するのは友花だよ?」

「でも颯太が手伝ってくれるでしょ?」

これも毎年の事。
いつも宿題を後回しにしちゃう私は夏休み後半に後悔するんだけれど、
毎回颯太が手伝ってくれる。

「ダメだよ、今年は友花が1人でやるんだよ」

「え……?」

「僕は教えてあげるだけだよ。
大丈夫、友花はちゃんと出来るから」

「……うん」

「さ、じゃあ片付けて宿題しようか」

食べ終えた食器をキッチンへ運ぶ颯太の後ろ姿を見ながら何だか不安を感じた。


何で、
私ひとりでって、強調するの?

私は颯太がいないとダメなのに。

私は颯太がいないとひとりなのに。






ねぇ、颯太。

颯太はこの時からずっと教えてくれてたんだよね。

私は颯太がいなくてもちゃんと出来るんだって。
ちゃんと、生きていけるんだって。

そして、
私がひとりぼっちなんかじゃない事も。

ずっとずっと、
私に教えてくれていたんだよね。



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