あの夏、君と最初で最後の恋をした

眠った友花をソファーへ寝かせて、布団をかける。

友花の頬に流れる涙を指で拭う。

……もう、僕が友花の涙を拭う事はない。
これから先、友花に好きな相手が出来たら、
その人が友花の涙を拭うのだろう。

友花の手を引き、
友花と歩き、
友花と笑い合うのは、
もう僕じゃない。

幸せになってほしい。
その言葉に嘘はない。
世界一幸せになってほしい。

だけど……

「悔しいな……」

ぽつりと言葉と一緒に涙が流れたのが分かった。

……僕が、幸せにしたかった。
僕が、友花を世界一幸せにしたかった。

友花の手を引くのも、
友花と一緒に歩くのも、
友花と笑い合うのも、
僕が、したかった。

ずっとずっと、一緒にいたかった。
ずっとずっと、隣にいたかった。

一緒に、
幸せになりたかった。

友花がいなきゃ幸せになれないのも、
友花がいなきゃ無理なのも、
友花がいなきゃ笑えないのも、
全部全部、僕の方だ。

嫌だよ、
また友花と別れなきゃいけないなんて。

……だけど、もう僕はこの世にはいられない。
友花を幸せに出来ない。

「大好きだよ、友花」

眠っている友花に伝えて、
最後のキスをする。

大好きだよ、
世界で1番、友花が大好きだよ。

だから、世界一幸せになって。

いつか友花がこっちに来たら、
約束通りたくさん褒めさせて。
たくさん抱きしめさせて。

大丈夫だよ、友花ならちゃんと前を向いて生きていける。

そんな友花を、僕は見守ってるから。

さようなら、友花。

おばあちゃんになって、幸せだったよって伝えにくるその日を楽しみに待ってるね。

大好きだよ、友花。

どうか、どうか、
幸せに――。



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