口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「新婦、誓いますか」
「……はい。誓います……」
「それでは、誓いの口づけを」

 清広は神父に促されるままつぐみの顔を覆い隠すベールを外し、唇同士を重ね合わせ──ゆっくりと身体を離した。

(やっと、清広さんの妻になれたんだ……)

 些細なすれ違いが二人の仲を阻み、ここに至るまで十年半もかかってしまった。

(本当に、よかった……)

 愛する人の口づけは、先ほどまで不安と恐怖でいっぱいだったつぐみの気持ちを、幸福で塗り替えてくれる。

 幸せな気持ちで満たされた彼女が、清広とともにチャペルをあとにするべく歩みを進めれば──通常の結婚式では見られない、不思議な光景が繰り広げられた。

 号令とともに、海上自衛隊の礼服を身に纏った参列者達が一斉に敬礼をすると、ヴァージンロードへ一糸乱れぬ行進を行い、歩み寄ったのだ。

 新郎新婦の前には先導する一名の男性と、左右に別れた六人の男性達が姿を見せた。

「これより、サーベルアーチを行います」

 式場スタッフの案内とともに、先頭の男性が何度か合図を送る。

 清広と同じ真っ白な礼服を身に着けていた男性達は敬礼後、腰元の鞘からサーベルを引き抜き、中央に掲げた。
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