口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「目黒海将の結婚式は、冬だったからな。これは夏服だ」
「制服が、二つあるんですね……」
「ああ」
「どんな衣装を身に纏っていても。清広さんは、とても素敵です……」

 つぐみがうっとりと目元を綻ばせれば、その笑顔にやられた清広は恥ずかしそうに口元を抑えながら、彼女に手を差し出した。

「準備ができたのなら、行こう」
「……はい」

 小さく頷いてから清広の指先に手を触れ合わせ、チャペルへと向かったつぐみは──思ったよりも参列者がいたことに、驚いてしまった。

(あれ? 身内だけの、式じゃない……?)

 急に決まったのだから、親族以外の都合をつけるのは難しいはずだと考えていた彼女は、先ほどまでの幸福な気持ちが一気に急降下していくのを感じる。

「愛し合うと誓いますか」
「誓います」

 つぐみは注目されることが、あまり好きではない。

 大人しい性格をしているため、これほど大勢の人達に祝福される価値などないと、尻込みしてしまったのだ。

 一度始まってしまった挙式はつぐみの心を置き去りにして、順調に進んでいく。

(集中しなきゃ……)

 彼が嘘偽りのない瞳で神父に誓う姿を目にした彼女は、どうにか意識を現実に引き戻すと、固い表情でじっと前を見つめた。
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