口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
 彼の行動は、ある意味では正解だった。

 ベッドの上から降りようとしていたつぐみは清広の勢いを押し殺し切れず、両手首を拘束された状態で背中を打ち付けた。

「心が手に入らないなら、身体から籠絡するつもりですか」
「違う。俺をその辺の変質者と、一緒にしないでくれ」
「似たようなものですよね? 私の気持ちなんて、聞くつもりはないんでしょう!?」
「誤解だ」
「あの時できなかったことが今ならできるなんて、ありえません!」
「落ち着け」
「そんな根拠のない自信を持って、私に言い寄ってこないでください……!」
「つぐみ」
「いいから、離し……っ!」

 彼女の言葉は、最後まで声にならなかった。

 清広がつぐみの唇を、塞いだからだ。

 噛みつかれるような口づけを彼と交わしたことのなかった彼女は、その荒々しいキスに翻弄される。

「言いたいことは、それだけか?」

 清広が唇を離せば、二人の間に細い透明な糸がだらりと伸びていることに気づく。

「俺達の間には、誤解があるようだ」

 それが混ざり合った唾液だと知ったつぐみが再び怒り狂う前に、微笑んだ彼が静かに告げた。
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