口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「早くつぐみを自分のものにしたくて、焦っていることは確かだ。その結果、君を怒らせてしまった」

 悪気はなかったのだと伝えるように、彼は目を伏せてつぐみを見下ろす。

(大嫌いになれたら、よかったのに……)

 彼に対する怒りは抱いても、嫌いにはなれない。

 それは心のどこかで、清広がまだ自身を好きでいてくれたことに対して、喜びを感じているからなのだろう。

「もっと言葉を交わし合い、心の距離を近づけてからプロポーズをするべきだったと、深く反省している」

 再び謝罪を受けたつぐみは、訝しげな視線を彼に向けた。

(本当に、反省しているの……?)

 清広の瞳の奥底に浮かぶ感情には、嘘や偽りは感じられないが──彼は、一度やると決めたら、必ずやり遂げる男だ。

 つぐみにどれほど否定されようとも。
 自分だけのものにすると決めたのなら、嘘くらいは簡単につく。

「今日は何もしない」

 清広を信じられないつぐみが唇を噛み締めながら黙り込めば、二人の間には長い沈黙が下りた。

 互いに率先して話し合いをしようと思うタイプではないため、どちらかがこの不穏な空気をどうにかしたいと考えない限り、一生続くのだろう。
< 23 / 160 >

この作品をシェア

pagetop