口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
(どうしてこんなことに、なっちゃったんだろう……)

 つぐみは憂鬱な気持ちでいっぱいになったが、怒りに任せて発した言葉が元に戻ることはない。
 ここまで来たら、とことんやり合うべきだ。

「だったら、この手を離してください」
「……逃げないと、約束してくれるのなら」

 互いに一歩も引かない、睨み合いが始まった。

 普段のつぐみであれば、面倒事を避けるために自分から頭を下げるが──相手は気心の知れた清広だ。

 今回ばかりは、絶対に譲れなかった。

(口封じのために、唇を奪うような人だもの。このまま清広さんの思い通りに、なってはいけない)

 このまま既成事実を作り、結婚するしかない状況に追い込まれるのだけは嫌だったのだろう。

 彼女の怒りを目の前にした清広は、つぐみと繋いだ指先を渋々と言った様子で離した。

「揉め事を解決してくださったことだけは、感謝しています。ですが、」
「その先など、今は聞きたくない」
「清広さん……!」

 自分の望みを叶えることしか考えていない彼の言動が嫌だと、伝えたばかりなのに。
 不貞腐れたようにそう告げた清広は、彼女の横に寝転がるとつぐみの腰を抱き寄せる。
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