口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「食べさせてやろうか」
「あ、あの……」
「ほら。あーん……」
唇を開くように促された彼女は、顔を真っ赤にしながら震える指先を使い、清広からスプーンを奪い取った。
「ひ、一人で食べます!」
「そうか。残念だ……」
クスクスと微笑む彼を涙目で睨みつけたつぐみは、挨拶をしてから手に持ったカトラリーを口に運ぶ。
「いただきます」
皿の上に盛られたカレーには、たくさんの野菜が入っている。
じゃがいも、人参、たまねぎまでは見慣れた食材だが──。
食べ進めているうちに、見慣れない食材が仲間入りしていることに気づく。
「苦手な野菜があったのか」
「いえ。ナスが入っているんですね」
「ああ。俺達が日々職場で食べている味に、限りなく近いはずだ」
「いつも……?」
「二十四時間三百六十五日海の中を海港していると、曜日の感覚が薄れる。毎週金曜日は、必ずカレーを食べるんだ」
「なるほど……」
陸の上で何不自由なく暮らすつぐみには、毎週決まった曜日にまったく同じ夕飯のメニューを食べる習慣がない。
「あ、あの……」
「ほら。あーん……」
唇を開くように促された彼女は、顔を真っ赤にしながら震える指先を使い、清広からスプーンを奪い取った。
「ひ、一人で食べます!」
「そうか。残念だ……」
クスクスと微笑む彼を涙目で睨みつけたつぐみは、挨拶をしてから手に持ったカトラリーを口に運ぶ。
「いただきます」
皿の上に盛られたカレーには、たくさんの野菜が入っている。
じゃがいも、人参、たまねぎまでは見慣れた食材だが──。
食べ進めているうちに、見慣れない食材が仲間入りしていることに気づく。
「苦手な野菜があったのか」
「いえ。ナスが入っているんですね」
「ああ。俺達が日々職場で食べている味に、限りなく近いはずだ」
「いつも……?」
「二十四時間三百六十五日海の中を海港していると、曜日の感覚が薄れる。毎週金曜日は、必ずカレーを食べるんだ」
「なるほど……」
陸の上で何不自由なく暮らすつぐみには、毎週決まった曜日にまったく同じ夕飯のメニューを食べる習慣がない。