口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
(海上自衛官って、大変なんだ……)

 いっそのことファミレスチェーン店の日替わりメニューのように、曜日ごとに毎週同じメニューを作って食べるように普段から気をつけていないと、忘れてしまいそうだ。

 壁かけカレンダーをじっと見つめたつぐみは、潜水艦乗りならではの特殊な決まり事を頭の中に深く刻み込む。

(金曜日に清広さんと食事をともにする機会があったら、絶対にカレーを作ろう)

 黙々と食事を始めた清広に倣い、つぐみもゆっくりとスプーンでカレーと白米を掬って口に含む。

「甘いですね……」
「辛い方がよかったか。つぐみはいつも、甘口を食べているイメージがあったが……」
「いえ。ちょうどいいです。ありがとうございます……」
「そうか。スパイスを用意しておいたが、必要なかったな」

 清広は近くに置いてあったスパイスの瓶を手に取ると、蓋を開けてカレーの上にそれを振りかけていた。

(これなら、完食できそう……)

 カレーは辛いと言う固定概念があり、つぐみは今まで率先して食べたいと思うメニューではなかったのだが……。

 清広が作ってくれたレシピのものであれば、これから毎日のように出されても問題はなさそうだ。
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