口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
 それが真面目に仕事をしているからこそ染み着く、愛する人特有の匂いであれば、受け入れるしかない。

「私はそれほど、気にならないですよ……」
「無理をするな」
「本心です。臭いで、すぐにわかりますから。清広さんが一緒にいるのは、夢ではないと……」

 清広はつぐみの言葉を耳にして瞳を潤ませると、嬉しそうに口元を緩ませた。

「つぐみは俺を幸福な気持ちにさせる、天才だな……」

 感極まった清広は、つぐみに遠慮する必要がなくなったからだろうか。

 彼女の上に覆い被さると、口づけの雨を振らせる。

「清広さん……。なんだか、くすぐったいです……」

 唇、頬、額、首筋──清広が彼女の全身へ触れるたびに、つぐみは身を捩りながら微笑んだ。

(夢みたい……)

 再び彼の前で笑顔になれる日がなど、思いもしなかった。

(清広さんとなら……。この先も、怖くない……)

 気持ちを通じ合わせた今だからこそ、彼を拒む理由はない。

「つぐみ、愛している……」

 幸福感に包まれた彼女は、彼の首筋に両手を絡め──何度も愛を囁く清広を、受け入れた。
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