口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
(よかった……。清広さん、居た……)

 彼女は清広が在宅していることに、ホッと胸を撫で下ろす。

(着替えて来ようかな……)

 身支度を整えるために、つぐみが自室へ向かおうとした時だった。
 電話を終えた清広が、彼女の手首を掴んで呼び止めたのは。

「ちょうどいいところに来たな」
「お、おはようございます。清広さん……」
「ああ。突然だが、これから結婚式をすることになった」

 清広はつぐみに思いもよらぬ爆弾発言を涼しい顔ですると、彼女を抱き上げて自室へ運び込む。

(け、結婚式って……予約とか、必要だよね……?)

 フォトウェディングなら空きさえあれば飛び込みも不可能ではないが、結婚式場は原則予約制だ。
 急に決めて決行など、ドタキャンをした人でもいない限り難しいだろう。
 つぐみは困惑しながら、疑問を解消するべく清広に問いかけた。
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