口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「りょ、両親は……?」
「すでに呼んである」
「式場の手配……」
「済ませた。あとは身一つで、向かえばいいだけだ」

 つぐみに聞かれるであろう質問の答えは、事前に用意していたらしい。

 次々に答えが飛び出てくることに驚いている間に、清広はテキパキと彼女に服を着せて外出の準備を進める。

「清広さん。着替えくらい、自分で……」
「もう終わった」
「あ、ほんとだ……」
「行くぞ。今日は、忙しくなる」

 清広は状況を飲み込めていないつぐみと指先を絡め合い、離れないように手を繋ぐと──着替えを済ませた彼女と、自宅を出た。
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