凍った花がとけるとき
――たすけて。
部下のプライベートの携帯番号なんて、登録されていないかもしれない。そもそも運転中だったらどうしよう。
気づいてもらえるだろうか。
スマホを持つ手が震える。呼び出し音の鳴る時間が、永遠のように感じられた。
このスーパーは、都心特有の富裕層をターゲットにしているせいか、わりと不親切なつくりで、上の階へいくエスカレーターに乗るためには、反対側に回り込まなければならない。買い物客を周遊させるこのつくりに普段はイライラしていたけれど、誠治に追いつかれる可能性は低くなるだろう。
一番混んでいるであろう二階の食品売り場に着いたあたりで、電話が繋がった。
「……三崎さん?」
名乗る前に、慌てた声が耳から聞こえてきて、全身の力が抜ける。
「副社長……っ」
「どうしたの!?」
縋るような声に、一瞬で副社長の空気が変わる。
「たすけてください……!」
混乱したわたしを宥めながら、副社長はすぐに行くから、と言ってくれた。会社近くにいることを説明すると、すぐに着けるという。
「危ないから、そこ動かないで。電話切っちゃだめだよ」
声にならず、荒い息を吐いてこくこくと頷く。辺りを見回しながら、店内をゆっくり歩いた。二階から一つ下の階にある建物の入り口が見えるところまで移動する。
「あいつ、いた?」
「わかりません、今は見当たらないけど、もしかしたらもう店内にいるのかも」
「気をつけて。店員さんの近くにいて」
震える手でスマホを掴みながら、また無言で頷く。
指先が冷たくて、手の感覚がない。
入り口のあたりを注視しながら、不自然にならないようにゆっくりと歩いていたけれど、誠治の姿は見当たらなかった。
全力で走り去ったけれど、さすがに飛び込んだ店は見えていたと思う。どこかの棚の陰から、突然現れるかもしれない、と思うと恐怖が迫ってくる。
座り込みたくなる足を叱咤しながら、ぐるぐると店の中を歩く。入り口から目を逸らさず、エスカレーター付近には近づかないようにしつつ、階段の場所を確認した。
部下のプライベートの携帯番号なんて、登録されていないかもしれない。そもそも運転中だったらどうしよう。
気づいてもらえるだろうか。
スマホを持つ手が震える。呼び出し音の鳴る時間が、永遠のように感じられた。
このスーパーは、都心特有の富裕層をターゲットにしているせいか、わりと不親切なつくりで、上の階へいくエスカレーターに乗るためには、反対側に回り込まなければならない。買い物客を周遊させるこのつくりに普段はイライラしていたけれど、誠治に追いつかれる可能性は低くなるだろう。
一番混んでいるであろう二階の食品売り場に着いたあたりで、電話が繋がった。
「……三崎さん?」
名乗る前に、慌てた声が耳から聞こえてきて、全身の力が抜ける。
「副社長……っ」
「どうしたの!?」
縋るような声に、一瞬で副社長の空気が変わる。
「たすけてください……!」
混乱したわたしを宥めながら、副社長はすぐに行くから、と言ってくれた。会社近くにいることを説明すると、すぐに着けるという。
「危ないから、そこ動かないで。電話切っちゃだめだよ」
声にならず、荒い息を吐いてこくこくと頷く。辺りを見回しながら、店内をゆっくり歩いた。二階から一つ下の階にある建物の入り口が見えるところまで移動する。
「あいつ、いた?」
「わかりません、今は見当たらないけど、もしかしたらもう店内にいるのかも」
「気をつけて。店員さんの近くにいて」
震える手でスマホを掴みながら、また無言で頷く。
指先が冷たくて、手の感覚がない。
入り口のあたりを注視しながら、不自然にならないようにゆっくりと歩いていたけれど、誠治の姿は見当たらなかった。
全力で走り去ったけれど、さすがに飛び込んだ店は見えていたと思う。どこかの棚の陰から、突然現れるかもしれない、と思うと恐怖が迫ってくる。
座り込みたくなる足を叱咤しながら、ぐるぐると店の中を歩く。入り口から目を逸らさず、エスカレーター付近には近づかないようにしつつ、階段の場所を確認した。