凍った花がとけるとき
最低なことをしてしまった。
決して手出しはしないと誓って三崎さんを家に匿ったはずなのに。
お酒を飲んだくらいで箍が緩むなんて最低だ。
彩乃さんの恋が上手くいったことを知って喜んだのと同時に、焦ったのは事実だ。
お見合いの日に聞いた限り、彼女はそう簡単に結ばれるとは思えない状況だった。なのに、結婚の約束までしたと聞いて、予想外の進展ぶりに驚いた。
しかもそれをお互いの親に認めてもらい、確実に前に進んでいる。
撫でた三崎さんの頬はひんやりしていた。風呂上がりの自分の体温が高かったせいかもしれないけれど。俺は頭の中まで上気していたから。
至近距離で目が閉じられたのを見て、我に返った。
三崎さんから距離を取り、謝った。彼女は動揺したのだろう、逃げるように自分の部屋へ入っていった。
なんてことをしてしまったんだと頭を抱える。
寝室に入れば、部屋を三つも挟んでいるから、三崎さんの様子はわからない。
それでも後悔に苛まれてなかなか寝付けなかった。睡魔がやっと近寄ってきた頃には、東の空はだいぶ明るくなっていた。
結局起き出したのは、平日より二時間ほど遅かった。熟睡できた感覚はなく、うたた寝を繰り返したようで、頭が重い。
気持ちも重いままダイニングを覗くと、エプロンをした三崎さんが小さな鍋をかきまぜている。
「あ、おはようございます」
微かな足音に気づいたのか、くるりと振り返って微笑む三崎さんは、いつも通りだった。
「おはよう」
「二日酔い、大丈夫ですか? 朝ご飯、中華粥にしてみたんですけど、食べられます?」
ことことと火にかかった鍋から、いい匂いがする。吸い寄せられるように近づいて、手元を覗き込んだ。
「美味しそう……」
「鶏だしで煮込んでみました」
「食べたい」
「ふふ、わかりました。じゃあ顔洗ってきてください」
そう言ってこちらを見上げる三崎さんは、いつもと変わらない。
全く意識されていないんだ、ということが嫌でも伝わってきてしまう。
嫌われたわけではないなら喜ばしいことのはずなのに、欲張りになった自分の心は落ち込むばかりだった。
それでも、三崎さんが作ってくれた中華粥はめちゃくちゃおいしかった。頭痛が残るほどの二日酔いではないけど少し胃が重かったのに、それでもするすると食べられてしまった。
さっさと動いてしまいそうな三崎さんをなんとか制して、食器を洗う。それでも横で、洗ったものを拭いては片付けていってくれる。
真横に立っているとどうにも頬や唇が目に入ってきて、気づけば見つめてしまう。
改めて謝りたいのに、まるでなかったかのように振る舞われると、どう切り出していいかわからなくなってしまう。
情けないことに何も言い出せず、書斎に入った。
パソコンを開けば、まあまあメールが来ていて、片っ端から処理していたらあっという間に時間が経ってしまった。
決して手出しはしないと誓って三崎さんを家に匿ったはずなのに。
お酒を飲んだくらいで箍が緩むなんて最低だ。
彩乃さんの恋が上手くいったことを知って喜んだのと同時に、焦ったのは事実だ。
お見合いの日に聞いた限り、彼女はそう簡単に結ばれるとは思えない状況だった。なのに、結婚の約束までしたと聞いて、予想外の進展ぶりに驚いた。
しかもそれをお互いの親に認めてもらい、確実に前に進んでいる。
撫でた三崎さんの頬はひんやりしていた。風呂上がりの自分の体温が高かったせいかもしれないけれど。俺は頭の中まで上気していたから。
至近距離で目が閉じられたのを見て、我に返った。
三崎さんから距離を取り、謝った。彼女は動揺したのだろう、逃げるように自分の部屋へ入っていった。
なんてことをしてしまったんだと頭を抱える。
寝室に入れば、部屋を三つも挟んでいるから、三崎さんの様子はわからない。
それでも後悔に苛まれてなかなか寝付けなかった。睡魔がやっと近寄ってきた頃には、東の空はだいぶ明るくなっていた。
結局起き出したのは、平日より二時間ほど遅かった。熟睡できた感覚はなく、うたた寝を繰り返したようで、頭が重い。
気持ちも重いままダイニングを覗くと、エプロンをした三崎さんが小さな鍋をかきまぜている。
「あ、おはようございます」
微かな足音に気づいたのか、くるりと振り返って微笑む三崎さんは、いつも通りだった。
「おはよう」
「二日酔い、大丈夫ですか? 朝ご飯、中華粥にしてみたんですけど、食べられます?」
ことことと火にかかった鍋から、いい匂いがする。吸い寄せられるように近づいて、手元を覗き込んだ。
「美味しそう……」
「鶏だしで煮込んでみました」
「食べたい」
「ふふ、わかりました。じゃあ顔洗ってきてください」
そう言ってこちらを見上げる三崎さんは、いつもと変わらない。
全く意識されていないんだ、ということが嫌でも伝わってきてしまう。
嫌われたわけではないなら喜ばしいことのはずなのに、欲張りになった自分の心は落ち込むばかりだった。
それでも、三崎さんが作ってくれた中華粥はめちゃくちゃおいしかった。頭痛が残るほどの二日酔いではないけど少し胃が重かったのに、それでもするすると食べられてしまった。
さっさと動いてしまいそうな三崎さんをなんとか制して、食器を洗う。それでも横で、洗ったものを拭いては片付けていってくれる。
真横に立っているとどうにも頬や唇が目に入ってきて、気づけば見つめてしまう。
改めて謝りたいのに、まるでなかったかのように振る舞われると、どう切り出していいかわからなくなってしまう。
情けないことに何も言い出せず、書斎に入った。
パソコンを開けば、まあまあメールが来ていて、片っ端から処理していたらあっという間に時間が経ってしまった。