凍った花がとけるとき
「三崎さん……!」
目を逸らしたそのとき、遠くからわたしを呼ぶ声が聞こえた。エレベーターホールから転がり出るようにやってきたのは、帆足くんだった。
誠治から奪い返すように、わたしの両肩を掴んで引き剥がすと、すぐに自分の後ろに匿ってくれる。
守るように目の前に立った帆足くんは、「警察呼びますよ」と冷たい声で言い放つ。
誠治はわたしに会いにきただけ、などと、もごもごと言っていたが帆足くんの毅然とした態度に慌てたのか、「なんだよ、ただ会いにきただけじゃないか」と言いながら走り去っていった。
その背中を見ながら、全身の力が一気に抜けて、くたくたとその場に座り込んでしまった。帆足くんが慌てて支えてくれる。一緒にいた担当者がどうしたものかとおろおろしていたので、ちょっと驚いただけだと伝えて先に戻ってもらう。申し訳ないけれど、帆足くんの手を借りて立ち上がった。
「どうして、来てくれたの」
恐怖に駆られて思わずあのひとの名前を呼ぼうとした瞬間、現れてくれた帆足くんに訊ねる。
「さっきコンビニに行ったんだけど、入口をチラチラ見ているあいつがいたから気になってて。そしたら三崎さんが玄関まで歩いていくのが見えたから、なんか心配で」
「戻ってきてくれたんだ……ありがとう」
「いや、むしろ警備員に報告しておくべきだった。ごめん」
ふるふると首を振る。たとえ報告していたとしても、あんな風に一目散に向かってこられたら、どうすることもできなかっただろう。
確かに最近、会社の目の前であっても外に出る機会がなかった。誠治がいたのは今日だけなんだろうか、それとも前から――?
ぞわりと背筋が冷たくなった。
「大丈夫……?」
身を震わせたからか、帆足くんが気遣うように声を掛けてくれる。
「大丈夫。ごめんね、本当に助かりました」
「そんなのは全然いいけど……」
口ごもる帆足くんは、多分誠治のことを聞きたいのだろう。けれど今はどうなのか、と躊躇っている様子に申し訳なくなった。
「ごめん、改めて話すのでもいいですか」
「もちろん。俺も話したいことあるし……。帰りとか、時間ある?」
今日は副社長は打ち合わせの後は会食だったはず、と頭のなかでスケジュールを思い出し、頷いた。ただまた待ち伏せされていたら怖いので、社内で話を聞いてもらうことにして、エレベーターホールに向かう。降りてきたエレベーターの扉が開き、前に移動すると、中から人影が飛び出してきた。
目を逸らしたそのとき、遠くからわたしを呼ぶ声が聞こえた。エレベーターホールから転がり出るようにやってきたのは、帆足くんだった。
誠治から奪い返すように、わたしの両肩を掴んで引き剥がすと、すぐに自分の後ろに匿ってくれる。
守るように目の前に立った帆足くんは、「警察呼びますよ」と冷たい声で言い放つ。
誠治はわたしに会いにきただけ、などと、もごもごと言っていたが帆足くんの毅然とした態度に慌てたのか、「なんだよ、ただ会いにきただけじゃないか」と言いながら走り去っていった。
その背中を見ながら、全身の力が一気に抜けて、くたくたとその場に座り込んでしまった。帆足くんが慌てて支えてくれる。一緒にいた担当者がどうしたものかとおろおろしていたので、ちょっと驚いただけだと伝えて先に戻ってもらう。申し訳ないけれど、帆足くんの手を借りて立ち上がった。
「どうして、来てくれたの」
恐怖に駆られて思わずあのひとの名前を呼ぼうとした瞬間、現れてくれた帆足くんに訊ねる。
「さっきコンビニに行ったんだけど、入口をチラチラ見ているあいつがいたから気になってて。そしたら三崎さんが玄関まで歩いていくのが見えたから、なんか心配で」
「戻ってきてくれたんだ……ありがとう」
「いや、むしろ警備員に報告しておくべきだった。ごめん」
ふるふると首を振る。たとえ報告していたとしても、あんな風に一目散に向かってこられたら、どうすることもできなかっただろう。
確かに最近、会社の目の前であっても外に出る機会がなかった。誠治がいたのは今日だけなんだろうか、それとも前から――?
ぞわりと背筋が冷たくなった。
「大丈夫……?」
身を震わせたからか、帆足くんが気遣うように声を掛けてくれる。
「大丈夫。ごめんね、本当に助かりました」
「そんなのは全然いいけど……」
口ごもる帆足くんは、多分誠治のことを聞きたいのだろう。けれど今はどうなのか、と躊躇っている様子に申し訳なくなった。
「ごめん、改めて話すのでもいいですか」
「もちろん。俺も話したいことあるし……。帰りとか、時間ある?」
今日は副社長は打ち合わせの後は会食だったはず、と頭のなかでスケジュールを思い出し、頷いた。ただまた待ち伏せされていたら怖いので、社内で話を聞いてもらうことにして、エレベーターホールに向かう。降りてきたエレベーターの扉が開き、前に移動すると、中から人影が飛び出してきた。