凍った花がとけるとき
その日は結局、ゆるく抱きしめられながら眠った。
朝起きると、目の前に整った副社長の顔があって息を呑む。けれどすーすーと穏やかな寝息が聞こえてきて、ほっとした。
昨日、副社長は「いろいろあって疲れたでしょ」と気遣ってくれて、わたしはその体温に安心してすぐに寝入ってしまったのだ。
副社長の腕はゆるく絡まっていただけだったので、そっと抜け出した。
今日も仕事だ。アラームもかけずに寝てしまったわりによく起きられたけれど、キッチンに行って朝食の準備をしながら、部屋を往復して身支度を済ませる。
お湯が沸いてコーヒーを淹れようとしたところで、がちゃりとドアが開いて副社長が起きてきた。
「おはよ」と言いながらこちらに近づいてきた副社長はまだ部屋着姿だ。今まではびしっとスーツを着てからやってくることが多かったから新鮮。そう思って眺めていると、ちゅっとつむじのあたりに口付けられた。
「お、おはようございます。もうパン焼いていいですか」
「うん、ありがとう。歯磨いてくる」と言いながらリビングを後にする副社長はいつもと同じように平静に見えた。姿を見るだけでドキドキしてしまうわたしとは落ち着きが全然違う。
しばらくして戻ってきた副社長は、スーツを着込み髪もセットした会社モードだった。逆にこっちの方が少し安心してしまう。けれどカフスボタンを留めている仕草が見えて、少しだけ俯いた表情に釘付けにされてしまった。
見ていたことに気づいたのか、副社長が「ん?」と軽く首を傾げて見ている。もうだめだ。一挙手一投足が気になって落ち着かない。
なんとか朝食を食べて片付けを済ませ、一緒に家を出る。
鍵をしめると、「はい」と副社長が手を出してきた。きょとんと見下ろすと、ぐっと近づいてくる。それでもぱちぱちと目を瞬かせていると、副社長の手がすっとわたしの手のひらを握った。
「駐車場に着くまでね」と小声で囁かれて胸がときめく。赤くなった顔を隠すように無言で頷いて、一緒に歩き出した。
約束通り、渡辺さんの姿が見えた瞬間から、副社長はがらっと態度を切り替えた。むしろ私のほうが、時々昨晩のことを思い出してはぼうっとしてしまった。
それでも仕事をしている副社長の隣にいると、このひとに見合った秘書になりたいという気持ちが湧き上がってくる。そう必死に自分に言い聞かせて働いていたんだけれど――。
朝起きると、目の前に整った副社長の顔があって息を呑む。けれどすーすーと穏やかな寝息が聞こえてきて、ほっとした。
昨日、副社長は「いろいろあって疲れたでしょ」と気遣ってくれて、わたしはその体温に安心してすぐに寝入ってしまったのだ。
副社長の腕はゆるく絡まっていただけだったので、そっと抜け出した。
今日も仕事だ。アラームもかけずに寝てしまったわりによく起きられたけれど、キッチンに行って朝食の準備をしながら、部屋を往復して身支度を済ませる。
お湯が沸いてコーヒーを淹れようとしたところで、がちゃりとドアが開いて副社長が起きてきた。
「おはよ」と言いながらこちらに近づいてきた副社長はまだ部屋着姿だ。今まではびしっとスーツを着てからやってくることが多かったから新鮮。そう思って眺めていると、ちゅっとつむじのあたりに口付けられた。
「お、おはようございます。もうパン焼いていいですか」
「うん、ありがとう。歯磨いてくる」と言いながらリビングを後にする副社長はいつもと同じように平静に見えた。姿を見るだけでドキドキしてしまうわたしとは落ち着きが全然違う。
しばらくして戻ってきた副社長は、スーツを着込み髪もセットした会社モードだった。逆にこっちの方が少し安心してしまう。けれどカフスボタンを留めている仕草が見えて、少しだけ俯いた表情に釘付けにされてしまった。
見ていたことに気づいたのか、副社長が「ん?」と軽く首を傾げて見ている。もうだめだ。一挙手一投足が気になって落ち着かない。
なんとか朝食を食べて片付けを済ませ、一緒に家を出る。
鍵をしめると、「はい」と副社長が手を出してきた。きょとんと見下ろすと、ぐっと近づいてくる。それでもぱちぱちと目を瞬かせていると、副社長の手がすっとわたしの手のひらを握った。
「駐車場に着くまでね」と小声で囁かれて胸がときめく。赤くなった顔を隠すように無言で頷いて、一緒に歩き出した。
約束通り、渡辺さんの姿が見えた瞬間から、副社長はがらっと態度を切り替えた。むしろ私のほうが、時々昨晩のことを思い出してはぼうっとしてしまった。
それでも仕事をしている副社長の隣にいると、このひとに見合った秘書になりたいという気持ちが湧き上がってくる。そう必死に自分に言い聞かせて働いていたんだけれど――。