凍った花がとけるとき
エピローグ
「海斗さん! 今日はこっちのネクタイにしてください」
「え、紗央里にもらったのをしてこうと思ったんだけど」
「だめです。先方の製品じゃないと。これはいつでもいいです!」
そういって、結びかけのネクタイを奪い取ると、クローゼットから出してきたシンプルなネクタイをかわりに巻く。
海斗さんは「これ、地味だよねえ」なんて言っているけれど、関係ない。商談第一だ。
「あー、まって。やっぱりそっちも持っていく」
そう言うと、海斗さんはわたしの手にあったくすみピンクのネクタイを抜き取った。
「今日、実家行くじゃない? その時はこっちに付け替えていくから」
今日は二人で真瀬の家にお呼ばれしている。正式にお付き合いをはじめてからすぐご両親に紹介されたわたしは、それ以来時々お招きいただいて、食事をご一緒することがあった。お二人とも優しくて、海斗さんがこんな素敵な男性に育ったことが頷けるご両親だ。
付き合い始めたのをきっかけに、わたしの住んでいたアパートを正式に解約して、そのままわたしたちは一緒に暮らし始めた。
それからも変わらず、わたしは副社長の秘書として勤めている。
思ったことはちゃんと口にしているせいか、家でのわたし達も、会社でのわたし達もあまり関係は変わらない。うるさい秘書だと思われているんじゃないかと不安になることもあるけれど、そういう時どこで察するのか、海斗さんは夜、わたしをどろどろに甘やかす。
海斗さんはベッドの中でだけ少し意地悪で、それ以外のときはいつもわたしを立ててくれる優しいひとだ。
我に返ると「海斗さんは天性の人たらしですね」と言ってしまって、また仕事モードに戻ってしまうわけだけれど。
今朝も変わらず二人で朝食を食べ、ばたばたと家を出て、一緒に出勤した。
今日は打ち合わせも同席する予定なので、一日一緒にいられる日だ。公私混同しないように気をつけているけれど、嬉しいものは嬉しい。
お世話になっているという会社の代表の方に、海斗さんが直接問い合わせてくれたところ、誠治は会社内でも度々問題を起こしていて、地方支社に出向になったそうだ。
九州地区のとある支社で缶詰になっているらしい。起こした問題の内容は知らないけれど、首にならなかったなんて、優しい会社だと思う。
しばらくこちらへ戻ってくることはなさそうだ。用心はし続けているものの、それでも平穏な日々を過ごすことができていた。
もっとも海斗さんの過保護っぷりは変わらないから、一人で行動することはほとんどないのだけれど。
「え、紗央里にもらったのをしてこうと思ったんだけど」
「だめです。先方の製品じゃないと。これはいつでもいいです!」
そういって、結びかけのネクタイを奪い取ると、クローゼットから出してきたシンプルなネクタイをかわりに巻く。
海斗さんは「これ、地味だよねえ」なんて言っているけれど、関係ない。商談第一だ。
「あー、まって。やっぱりそっちも持っていく」
そう言うと、海斗さんはわたしの手にあったくすみピンクのネクタイを抜き取った。
「今日、実家行くじゃない? その時はこっちに付け替えていくから」
今日は二人で真瀬の家にお呼ばれしている。正式にお付き合いをはじめてからすぐご両親に紹介されたわたしは、それ以来時々お招きいただいて、食事をご一緒することがあった。お二人とも優しくて、海斗さんがこんな素敵な男性に育ったことが頷けるご両親だ。
付き合い始めたのをきっかけに、わたしの住んでいたアパートを正式に解約して、そのままわたしたちは一緒に暮らし始めた。
それからも変わらず、わたしは副社長の秘書として勤めている。
思ったことはちゃんと口にしているせいか、家でのわたし達も、会社でのわたし達もあまり関係は変わらない。うるさい秘書だと思われているんじゃないかと不安になることもあるけれど、そういう時どこで察するのか、海斗さんは夜、わたしをどろどろに甘やかす。
海斗さんはベッドの中でだけ少し意地悪で、それ以外のときはいつもわたしを立ててくれる優しいひとだ。
我に返ると「海斗さんは天性の人たらしですね」と言ってしまって、また仕事モードに戻ってしまうわけだけれど。
今朝も変わらず二人で朝食を食べ、ばたばたと家を出て、一緒に出勤した。
今日は打ち合わせも同席する予定なので、一日一緒にいられる日だ。公私混同しないように気をつけているけれど、嬉しいものは嬉しい。
お世話になっているという会社の代表の方に、海斗さんが直接問い合わせてくれたところ、誠治は会社内でも度々問題を起こしていて、地方支社に出向になったそうだ。
九州地区のとある支社で缶詰になっているらしい。起こした問題の内容は知らないけれど、首にならなかったなんて、優しい会社だと思う。
しばらくこちらへ戻ってくることはなさそうだ。用心はし続けているものの、それでも平穏な日々を過ごすことができていた。
もっとも海斗さんの過保護っぷりは変わらないから、一人で行動することはほとんどないのだけれど。