凍った花がとけるとき
「相談したかったのはそれだけじゃなくて。紗央里、もう寝室は一緒でいいよね?」
毎日一緒に寝てるし、と付け加えられ、返事をする間もなく、
「今使ってるゲストルームの隣を紗央里の部屋にしたらどうかなって。ちょっと狭くなるけど、お風呂もわざわざ部屋の使うことないし」
確かに、正式にお付き合いを始めてから、わたしもお風呂は広いほうを使わせてもらっている。
「はい。それは全然。ゲストルームは空けておいた方がいいですもんね」
「まあ誰も泊まりに来ないけどね。前は時々母親が来てたけど」
「え、そうなんですか」
「そう。シャンプーはこれを用意しとけ、とかボディソープはあれだとか、色々指定されて面倒だったな……」
わたしがありがたく使わせていただいていたのは、お母様ご指名のものだったのか。通りで髪も肌も調子が良いわけだ。きっと良いものなのだろう。
「前は夫婦喧嘩のたびに来てたんだよ。最近はあまり喧嘩してないみたいだけど……」
海斗さんはやれやれと首を竦める。
「とにかくそんな子どもっぽい親だから、あまり心配しないで。それより明日帰りにアパートに寄って引っ越しの準備しようね」
にっこり微笑まれて、結局わかりました、と頷いてしまった。
海斗さんが仕事をしている午後の間に、今ある荷物を隣の部屋に移した。こちらにも大きなクローゼットがあるので、アパートに残っている荷物も問題なく収納できそうだ。大きな家具や家電は処分しなければならないから、引取り業者を探しつつ、ベッドの上に置いたクッションを手に取った。
ベルベット生地のブルーのクッション。これは寝室に置かせてもらってもいいかなあと考えて、そっと部屋を出る。
もう自由に出入りしている寝室の扉を開けた。レースのカーテン越しに穏やかな日の光が差し込んでいる。
大体いつもわたしが窓側で眠るので、クッションをそっとベッドの奥に置いた。
と、開けっぱなしだった扉の向こうから「紗央里?」と呼びかけられて、慌てて振り向く。書斎から出てきた海斗さんが立っていた。
「すみません、うるさかったですか?」
「全然、ちょっと休憩しようと思っただけ」
海斗さんはそう言いながら寝室のなかに入ってくる。
「コーヒー淹れましょう、」
か……?
と訊ねるつもりだったのに、大股で近づいてきた海斗さんにちゅっと口づけられて、最後まで言えなかった。
こつんと額を合わせられ、
「コーヒーは、再開するときに欲しいかな」
と言って、そのままもう一度口付けられる。ぬるりと唇を舐められて、酸素を求めた瞬間に深いキスに変わっていく。
いつの間にか、後頭部を押さえるように腕をまわされていた。
毎日一緒に寝てるし、と付け加えられ、返事をする間もなく、
「今使ってるゲストルームの隣を紗央里の部屋にしたらどうかなって。ちょっと狭くなるけど、お風呂もわざわざ部屋の使うことないし」
確かに、正式にお付き合いを始めてから、わたしもお風呂は広いほうを使わせてもらっている。
「はい。それは全然。ゲストルームは空けておいた方がいいですもんね」
「まあ誰も泊まりに来ないけどね。前は時々母親が来てたけど」
「え、そうなんですか」
「そう。シャンプーはこれを用意しとけ、とかボディソープはあれだとか、色々指定されて面倒だったな……」
わたしがありがたく使わせていただいていたのは、お母様ご指名のものだったのか。通りで髪も肌も調子が良いわけだ。きっと良いものなのだろう。
「前は夫婦喧嘩のたびに来てたんだよ。最近はあまり喧嘩してないみたいだけど……」
海斗さんはやれやれと首を竦める。
「とにかくそんな子どもっぽい親だから、あまり心配しないで。それより明日帰りにアパートに寄って引っ越しの準備しようね」
にっこり微笑まれて、結局わかりました、と頷いてしまった。
海斗さんが仕事をしている午後の間に、今ある荷物を隣の部屋に移した。こちらにも大きなクローゼットがあるので、アパートに残っている荷物も問題なく収納できそうだ。大きな家具や家電は処分しなければならないから、引取り業者を探しつつ、ベッドの上に置いたクッションを手に取った。
ベルベット生地のブルーのクッション。これは寝室に置かせてもらってもいいかなあと考えて、そっと部屋を出る。
もう自由に出入りしている寝室の扉を開けた。レースのカーテン越しに穏やかな日の光が差し込んでいる。
大体いつもわたしが窓側で眠るので、クッションをそっとベッドの奥に置いた。
と、開けっぱなしだった扉の向こうから「紗央里?」と呼びかけられて、慌てて振り向く。書斎から出てきた海斗さんが立っていた。
「すみません、うるさかったですか?」
「全然、ちょっと休憩しようと思っただけ」
海斗さんはそう言いながら寝室のなかに入ってくる。
「コーヒー淹れましょう、」
か……?
と訊ねるつもりだったのに、大股で近づいてきた海斗さんにちゅっと口づけられて、最後まで言えなかった。
こつんと額を合わせられ、
「コーヒーは、再開するときに欲しいかな」
と言って、そのままもう一度口付けられる。ぬるりと唇を舐められて、酸素を求めた瞬間に深いキスに変わっていく。
いつの間にか、後頭部を押さえるように腕をまわされていた。