あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜



——私は、漣に何を言って欲しいんだろう


遊びじゃないと。白雪だけだと言って欲しいんだろうか。甘やかして欲しいんだろうか。それとも、肌を重ねて安心したいだけ?

いずれにせよ今はこの気持ちのやり場をどうしていいか分からなかった。

そうして揺られるうちに建物が目に入り、奥の駐車場まで進むよう指示をした。パパラッチ対策だ。タクシーを利用した時は死角の無いこの場所でいつも降ろしてもらうようにしている。

代金を払ってタクシーから降り、何度も通ったエントランスへ入る。同じように何度も顔を合わせたコンシェルジュの女性に軽く会釈をして、その場を抜ける。…はずだった。


「…あの!」


初めて呼び止められ、驚いてそちらに目を向けた。
コンシェルジュの人はその場からわざわざ出てきてくれ、私に近寄る。


「呼び止めてすみません。…あの、及川様」

「…はい」


女性の酷く言いにくそうな表情に、その先を察してしまった。


「その…今は、向かわれない方が…いいかと、思います」

「……」


彼女の言葉、表情、それが全てを物語っていた。

——ああ、そういうこと…

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