あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜



不安材料が1つ無くなったおかげで、以前よりは睡眠障害は改善された。ただ、今も夜中に何度も目が覚める事は続き寝た気がしない。

もう一度受診した方がいいかと思っていたところ、和泉さんには通院していることがあっさりバレた。さすがやり手だと感心したところ、きちんと相談しろとしこたま怒られた。どうやら世間体が悪いそうだ。確かにと納得し、素直に謝った。

そんな折、先日契約の決まったCMの打ち合わせの為、私は事務所に呼ばれた。


「少しは眠れるようになったか」


担当者が来るまでの間、控え室で和泉さんと待っていたのだがその時に声をかけられた。


「…以前よりは、少し」

「はあ…分かった。また診察の時間は確保しとく」

「すみません」

「悪いと思うなら今度からは追い詰められる前に相談してほしいもんだな」

「はい…」


現在進行中の悩みは言えませんけどね、と内心で思う。

そんな事を考えながらスマホを意味もなく弄っていると、間も無くして打ち合わせに参加するスポンサーと広告代理店の担当者が部屋に入ってきた。

即座にスマホをしまい挨拶をしようと立ち上がったのだが、代理店の担当者が「すみません」と手のひらを出してそれを制した。


「実はもう1人参加する人がいまして。弊社と契約している事務所の者なんですが、すぐに来る予定で…」


刹那の後ドアが叩かれ、現れたその人に私は息が止まるかと思った。

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