あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
「では次は撮影当日、よろしくお願いします」
そう言って去っていく3人を見送り、私は無言で名刺や資料を片付ける。一枚だけ皺の入った用紙を丁寧に伸ばせば、漣の顔が浮かんでツキリと胸が傷んだ。
漣の様子は最後までいつもと変わらなかった。本心の読めない笑顔を貼り付けたまま。本当に、何ひとつだって。
一時は数日とおかず会っていた時もあったのに、数ヶ月連絡ひとつなくても、私が返事を返さなくても、全く気にしてない顔をしていた。
寂しいとか、ないんだろうな。そうだよね。そうなれば他の女性を相手すればいいだけ。漣がそんなこと思うはずがない。
文字通り、私は彼にとってセフレ…下手したらもっと酷い、ただの都合のいい女でしかないのだろう。
いただいた資料をクリアファイルへ挟んでバッグへ仕舞い込んでいると、和泉さんから名前を呼ばれた。
「白雪、この後だが…」
その時、電話が鳴った。
和泉さんかなと思ったけどすぐに違うと気付いた。
私のスマホの音だ。
「す、すみません…」
電話なんて鳴ること滅多にないのに不思議だなと思いつつ手に取れば、表示された名前に固まった。
「出ないのか」
誰からだと暗に込められた言葉だった。私は迷ったが、無視するとそれはそれで不自然な気がして出ることにした。
「…母からです。ちょっと話してきてもいいですか?」
「ああ」
私は廊下に出て、一度深呼吸をして通話ボタンを押し耳に当てる。電話の相手は挨拶することなく話し始めた。