あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
『さっきぶりだね、白雪』
「…何のよう?」
出来るだけ平静を装って返せば、漣は喫煙中なのか深く息を吐き出す音が聞こえた。
『まださっきの部屋にいる?』
「…いるけど、マネージャーもいる」
『そう。なら丁度いい』
何がだ。そう思うと同時に嫌な予感を感じる。漣がこうした弾んだ声を出す時は、決まって何かを企んでいる時だから。
『選んで。今すぐそこから連れ出されてホテルに直行するか、後で俺の家に来るか』
「…っ、なんで」
『なんでそんな事するか?…白雪が俺の連絡無視するからだろ』
低い声。まさかと思うが怒っているのだろうか。声色からは測れない。けれど、有無を言わさぬ圧だけは感じ取れた。
漣は本気だ。ここで無視すれば、彼はきっと前者の行動を実行に移す。
「…あとで、行くから」
だから変な事しないで。懇願するように告げた。
漣は私の答えを聞くと、待ってるねと短く言って通話を切った。
無機質な電子音を聞き、私は腕を力無く落とす。
再び部屋に入り、和泉さんへお待たせしましたと声をかけた。
「すみません。親にスケジュールを伝え間違えてたみたいで、心配の連絡でした」
「そうか」
和泉さんから疑いの気配は無い。私も随分と嘘が上手くなったものだ。
冷えた頭でそう思っていると、改めてさっきの続きだがと声がかかる。