あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜



エレベーターの中でぼんやりと立ち、5階に到着すれば無意識にため息が漏れた。

開いたドアを進んでいくと久しぶりに漣の自宅の香りを感じた。同時に、先日の出来事を思い出しては軽い吐き気を覚えた。

——この場所で、漣は、他の女性と、

急に眩暈がして体が傾いたけれど、体が床に打ち付けられる事は無かった。漣によって支えられていた。


「大丈夫?」


心地よい声と、鼻につくいい香り。背中に回された優しい手。
全てに勘違いしそうになる心を押し留めて、漣の体を押し返した。


「…平気。それより、脅して連れ込むのいい加減やめてよ」

「だってどうしても会いたかったから」


押し退けられたにも関わらず、漣は額にキスをした。


「…別に、私じゃなくてもいいじゃない」


口をついて出たのはそんな恨み言。けれど漣の態度は変わらない。


「白雪は特別な子だから」


嘘つき。私だって漏れなくその他大勢と同じくせに。
その証拠に、私の顔色にすら気付かない。ただの友人の那由多だって気付いたのに、欠片も触れてこない。
もうなんか、全てがどうでもいい。


「白雪、何か食べる?」

「いらない」

「そう。じゃあ…」


漣が私の肩を抱き、スッと心が冷える。そのまま移動され向かう先はバスルームで、今日はこっちかと冷めた頭で思った。

言われる前に服を脱ごうと手をかける。そして、肩に添えられた手が背中へと移動した。

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