あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
「俺?」
まるで予想すらしていなかったような声に苛立ちが増し、涙に濡れた目で強く睨みつけた。
「漣か思わせぶりなことばっかりするからじゃん…!」
私を好きだなんて言っておいて、大事にしておいて、平気で他の女にも同じことをする。寝れなくなったのだって、元はといえば全部漣が原因だ。
怒りに任せた言葉は全く響いていないのか、漣は動揺もせずただ首を傾げた。
「そりゃあするでしょ。白雪が好きなんだから」
「もうそんなの聞き飽きたよ!…だったら、私が好きならどうして、他の人と…」
喉の奥が詰まって声が出ない。いっそぞんざいに扱ってくれたら。今日だってすぐに寝室にでも連れ込まれれば嫌になれたかもしれないのに。
中途半端に大事にされたら、勘違いしそうになる。
もしかしたら彼の特別になれるんじゃないかって。
漣の唯一になれるかも、なんて、馬鹿な期待をしてしまいそうになるんだ。
「…もしかして白雪、家に来た?」
「……」
「…そっか。なるほどね」
漣は脚を組み直し、おもむろに正面を向いた。
「言い訳はしないよ。嘘を重ねても余計信頼を失くすだけだろうし」
「…っ」
瞳に溜まっていた涙がついに溢れた。悔しさで目元を拭う私に漣は未だこちらを向くことなく、視線を真っ直ぐ前に向けている。
それからしばらくの沈黙の後、漣はゆっくりと、言った。
「…俺もさ、寝れないんだ」