あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
萌葉はこちらを一瞥すると、静かにカップをソーサーに置いた。
「…本気っていうか、すごく好きになった人はいたよ」
「"いた"?」
過去形に表現した萌葉に違和感を感じた。切な気な表情に、そうは見えなかったから。
「私のこと全然好みじゃないんだってさ。そんなのもう諦めるしかないでしょ」
「……」
萌葉が好みじゃない?こんなに可愛いくて優しい彼女を?とてもじゃないけど信じられない。けれど唯一、そんな事を言っていた男性がふと頭に思い浮かんだ。
「言っとくけど、那由多じゃないからね」
「…また出てた?」
「丸わかり」
その言葉は流石に役者としてショックだ。そんな事などつゆ知らずと言ったように萌葉はため息をつく。
「もっとずっと年が上の人だよ。私、落ち着いた色っぽいおにーさんが好みなの」
「那由多に言ってたことまんまだね」
「そうだね。同志で話し合うと思ったんだけどなあ」
ふざけたように萌葉は笑ったけれど、きっと言えない何かを抱えているんだろうなと思った。
私と同じ、どうしようもない気持ちを。
「不毛な話はやめよう、暗くなる。それより美李亜だよ。あの性格ブスどうしようもないね。いっそあっちこっちで流れてる男遊びの噂全部週刊誌にリークしてやろうか」
「そんなに沢山あるの?」
「それこそ白雪達が出てたバラエティ、アイドルの冠番組だけどそのメンバーとも噂あるよ。てか、美李亜の匂わせがすごい。知らない?」
「SNSやらないから…」
「そうだったね」