あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
——え…?
どこか聞き覚えのある声。
いや、そんな生やさしいものじゃない。
どこまでも甘いその声は、未だ私の奥深くを占める、あの人のもの。
世界が止まったような気がした。
そんな。まさか。そんな訳ない。あの人がこんなところにいるわけがない。
そう思うのに、目の前の現実は、その思考を全て否定していた。
かつては銀色に輝いていた髪は日本人特有の色に染まり、髪は水に濡れてしなだれている。
だから気付けなかった。
今私の視界に映る男が、霜月漣だという事に。
「久しぶりだね、白雪」
あの頃と変わらない心地よいテノールボイス。優しげに垂れた瞳に目元の泣きぼくろ。
自ら捨てたはずなのに求めて止まない、愛しい男。
「漣…」
名前を呼べばにこりと返される笑顔。
けれどそこには、かつての慈愛は感じなかった。