あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜



「…白雪、さ」


呼ばれた名前は低く、冷たく感じた。


「まさか俺が、自分を捨てた女をいつまでも引きずってるような男に見えてる?」

「…っ!」


思わず顔を上げた。

そうだよ。何を自惚れてたんだ、私は。
今でも漣が自分を想ってくれているかもだなんて、どうしてそんな事思えたのだろう。
抉られたような胸の痛みとどうしようもない恥ずかしさで、もう消えてしまいたくなった。


「ち、ちが…ごめ、そうじゃ、なくて…」


言い訳が思いつかない。
喉の奥がツンと痛んでうまく言葉も出せず、涙まで滲んできた。

どうしよう。逃げたい。ここにいたくない。

やっぱり戻ろう。そう思ってもう一度ごめんと言い立ち上がれば、漣に「待って」と後ろから抱きすくめられた。


「ごめん、意地悪が過ぎた」


直接触れる地肌の温かさに胸が締まる。離してと言えば、腕はあっさりと解かれた。


「白雪が相変わらず可愛いからさ、つい、ね」

「……」


漣の言葉がどこまで本気なのか、今でも分からない。可愛いなどと言っておきながらその目は笑って居らず、拒絶も無いが優しさも無かった。

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