あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜


漣から専属の話をされて断りもしなかったけど了承もしていない。だというのに突然話をふっかけてきた漣の方に問題があるのでは?

そう思うと腹に据えかねるものを感じ、トークアプリを開いて漣に向けての文句の文面を送った。時差があるだろうからすぐに返事は来ないだろうとそのままバッグの中へ放り捨て、フンと鼻を鳴らして外を見る。


「……」


車窓から見えるネオン輝く都会の喧騒を、私はいつもこうして重い気持ちで見るだけだった。

演じる事が楽しいだけで無くなってしまったこの業界で散々人に揉まれ、好奇の目に晒されて、有る事無い事吹聴されて、時には嫌悪を向けられ。

信頼できる仕事のパートナーがいる、仲の良い友人もいる、応援してくれる家族がいる。私はとても恵まれているはずだ。

それでもどこか、いつもぽっかりと心に空いていた虚しさがそこにはあって。
酷く疲れた日は、どうして自分がこの業界で何の為に頑張ってきたのか、時折分からなくなってしまうことがあった。


それが今や漣への文句と怒りで頭が埋まっている。どこまでいっても私の世界を壊す人だなと、苛ついているはずなのに笑いが溢れてしまった。


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