あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
そうしているとようやく自宅マンションに到着した。事務所から与えられているタクシーチケットを渡して車から降り、一直線にエントランスに入る。
そこで家に食材が何もないことを思い出してげんなりしていると、スマホが振動していることに気付いた。
また和泉さんからお小言かなと、それならば切ってしまおうと掲げたところで違う人物であることを知り、驚きつつも通話ボタンを押した。
『あ、やっと出た』
電話向こうの声は弾んでいる。やっとということはしばらく気付かなかったのだろうか。
「電話くれてた?気付かなくてごめん、今帰りで…って違う!文句があるのはこっちだよ!勝手に何してくれてるの!」
漣、と名前を呼べば笑い声が返ってくる。
『家にはもう着いた?』
「マンションには着いたけどまだエントランス…ってまた!だから話を逸らさないで!漣のせいで私さっきマネージャーに怒られたんだよ?全くの無実なのに」
『契約の事?それなら話はついたよ』
「は…?」
『まだ家の中じゃないなら共有スペースで待ってて。すぐ行くから』
「すぐ行くって…は?ちょっと漣…!?」
その後すぐさま電話は切られ、無機質な音だけが耳元で鳴っている。
「…っ、もう!」
あまりの勝手さに怒りに任せて通話終了のボタンを乱雑に押した。共有スペースで待てと言われたが、すぐってなんだ。漣は今まだフランスのはずなのに。