あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
あっけらかんと言い放つ漣を凝視すれば、漣はマグカップを持って一口飲んだ。悪意の見えない行動に頭痛がして頭を抱え、次いで言葉を放つ。
「…私、交際相手が漣って事言ってなかったんだけど」
「ついでに結婚の事も言ってくれれば良かったのに」
「それについてはまだ保留でしょ。…ああ、また明日怒られる…」
「このまま交際発表しちゃう?」
「それは事務所と相談して決めるから口出さないで。というか、なんで私の許可なく事務所に話つけちゃうの」
「だって白雪、俺のこと欲しいって言ったじゃん」
さも当然のように言い放つ漣は、再びカップを置くと私の首裏に手を回しそのまま押し倒す。
「俺はそれに応じた。十分契約は成立でしょ」
「…そんなトンデモ理論を平然と振りかざされても…」
「俺がイカれてるのなんてとっくに知ってるくせに」
漣は愛しいものにでも触れるかのように指を頬に滑らせ、ゆっくりと顔を落としてきた。
どちらが言うでもなく舌が混じり合い、やがて水音が響く。また流されていると分かっていながらも、重なる唇の心地よさに少しばかりどうでも良くなってしまっていた。
離れる際に銀色の糸が引き、唾液に濡れた私の唇を漣の指の腹が拭う。
「そのマネージャーさんから伝言。明日朝イチで事務所に来るようにだってさ」
「…私だけ怒られるの腑に落ちないんだけど」
「もちろん俺も一緒だよ。…これから、ずっとね」
細められた目と私のリップの色が移った紅い唇は、いつかの悪魔の姿を彷彿とさせた。けれど仕方ない。分かっていて選んだのは私自身だ。
私はもう一度深く、さらに深く息を吐いた。