あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜

私にとって和泉さんが鞭なら社長は飴だ。穏やかな性格であまり怒りを露わにしない。経営者としては中々の手腕を持つ人だが育成者としては頼りない事を自覚しているのか、私に関してはそれを和泉さんに全任している。

その後は二、三お小言を言われるくらいで済み午後までは自由時間となったが、一度家に帰るのも微妙な時間のため事務所内で待機する事になった。


いい時間なので休憩スペースにて昼食を摂ってしまおうと、漣が近くの店でのテイクアウトを申し出てくれたので任せ、私は1人座って待つ事にした。

暇を持て余し、なんの気無しにスマホを開いて見れば、萌葉からメッセージが届いていた。


[白雪〜!明日の本恋会なんだけど、私仕事で少し遅れそうなの!先に那由多と始めててもらっていいからね!]


彼女らしい明るい文面の後には猫が謝っているスタンプが貼り付けられており、私の口角は自然と上がる。

本恋会というのは本恋で共演した3人で集まる飲み会で、数ヶ月から半年に1回単位で今も集まっている。前回すっぱ抜かれた事から少し慎重になったが、あんな事で数少ない息抜きを奪われるのを嫌だと言えば萌葉が大喜びして再び声をかけてきてくれた。

因みに萌葉には記事については誤解だと説明をしたが、ハナから信じてなかったらしく「寧ろ私がまた潰れちゃったからだよね。ごめんね〜」と謝罪を受け、なんとも言えない気持ちを抱いた。

グループトークでなく私個人に送ってくれるところも彼女の真っ直ぐな性格が表れていて、そんな彼女に隠し事を抱いていることは申し訳ないと思うけれど、この事は墓場まで持っていくつもりだ。

何より、例え酒に酔っていたとはいえ気持ちも無いのに体を簡単に許す女だと、彼女には、萌葉にだけは失望されたくなかった。

こんなのはただの、私の我儘だ。
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