あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
馬鹿じゃないの、そう言いかけたところで前の席のドアが開き那由多が車内から降りてきた。
「どうも」
酔ってはいるものの口調はハッキリとしており、突然の行動に私は目を剥いた。
「何してるの?ここ那由多の家じゃないよ」
「そこまで朦朧してねえよ。運転手には少しだけ待ってもらうように言ってる」
私にそう言うと、那由多は漣に目を向けた。
「白雪の恋人ってあんたですか」
どこか棘のある言い方で言う那由多に、漣は笑顔で肯定を返す。けれど私にはわかる。とても完璧に作られた笑顔だけど、警戒心のような、どこか不機嫌そうな雰囲気が漂っていることに。
「じゃあ言いたいことがあるんで、少しいいですか」
「…なにかな」
「ちょ、那由多…!」
何を言うか怖くなり割って入ろうとすれば、那由多が手だけで制してきた。けれどその目は細められていて、喧嘩を吹っ掛けたい訳では無いのだと感じ、素直に引き下がった。
「今度は白雪の事泣かせないでくださいよ。俺、泣いてる女を慰めるの本当は得意じゃないんで」
きっぱりと言い放つ那由多に一瞬眉を寄せたが、漣はキャップの鍔を持ち口角を上げる。