あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
漣は口元に手を当て少し考え込む素振りをしたかと思うと、すぐに笑顔に戻した。
「教えてくれてありがとう。君も充分気をつけて」
「俺は別に平気です。慣れてるんで」
あっけらかんと言うと、那由多は私に視線を向けた。
「那由多…ごめんなさい」
「言ったろ、慣れてるって。こんなの芸能人同士の交際じゃよくある話だから」
そう言って頭を軽く叩くと、「また飲もうな」と言い残して那由多は再びタクシーに乗り、去っていった。
それを最後まで見送る事なく背を向けられ、私は漣に引かれてエントランスへ入る。
那由多に脅迫文が届いていたという事実に未だ罪悪感と恐怖の抜けきれない私は始終黙り込んでいたが、漣の部屋に連れられ玄関ドアを閉めたところで優しく抱きしめられれば、それに少しばかり安心感が湧き上がった。
「…大丈夫だ、白雪。俺がいる」
私より広く厚い胸元と逞しい腕に包まれ、大きな手のひらで髪を撫でられ、たまらなくなった私は震えながら漣の背中に手を回した。
「…私のせいで、脅迫文だなんて」
「事務所にだけ届いてるなら彼の身の安全は会社が保証してくれる。白雪が心配しなくていい」
「…そう、なのかな」
「怖いだろうけど、安心して。白雪だけは俺が絶対に守るから」
「………うん」