あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
まさかこんな事になるなんて考えもしなかった。あんなのただの誤報なのに、それでも信じて相手を脅かすような事をしてくる、そんなファンが自分についているなんて考えただけで恐ろしかった。
勿論那由多も心配だ。けれど彼の事は事務所に任せるしか無い。
——けど、漣は…?
もし私達の交際が公になったとして、今回は事実。その矛先が漣に向いたらと思うと更に背筋が冷えた。
それに彼は今フリー。守ってくれる人は誰もいない。
万が一、漣が襲われて、彼を失う事になったら、私は…——
「白雪」
名前を呼ばれてハッと我に返った。漣の手が伸びて私の目尻を掬ったことから、私はそこで初めて自分が泣いている事に気付いた。
「…彼が心配?」
漣は複雑そうにしていた。私は顔に触れた漣の手を握り、頬を擦り寄せた。
「…もちろん心配だよ。けど…それよりもっと、漣に何かあったらって思ったら怖くなった」
「…俺?」
漣は目を見開いた。私は静かに頷く。
「今は事務所の判断で交際を伏せてるけど、もし今後公表して、漣にもしもの事があったら、私……」
考えただけで再び涙が溢れてくる。
自分でも非情だと思う。今心配すべきは那由多のはずなのに、まだ起こってもない未来に不安を抱いてしまっている自分があまりに冷たい人間で。
だとしても私は、どれだけ周りから責められようとも、目の前の愛した人のことを何よりも心配してしまうのだ。