あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
「…こういう時にさ、」
目を閉じていた私の耳に、漣の甘い声が優しく響く。瞳を開けば、声のままに優しい表情の漣が私を見つめていた。
「俺は大丈夫とか言っちゃうとフラグになるんだろうから、あんまり言わない方がいいのは分かってるけど、」
「…漣?」
漣は軽く触れるだけのキスをし、そして額を合わせてきた。
「俺はもう絶対、白雪から離れたりしないよ」
約束だ。そう言って笑った。
何の確証もない、本当にフラグが立ってしまいそうな言葉。
けれどあまりに漣がきっぱりと言い切るものだから、なんとなくそうなのかななんて思ってしまった。
「…うん」
気の利いた言葉が見つからず、私はただ頷くだけだった。けれど漣にとってはそれだけで良かったようで、また安心させるような優しいキスをされた。
胸に少しずつ生まれる感情は言葉にするのは難しい。ただ1番近い言葉を選ぶならば、信頼だと思う。少しずつ私は彼に対して、ただの恋という感情を抱くだけでなく、信じようとする気持ちを持ち始めている。
今の漣から漂ってくるのは彼の香りだけ。女の残り香もなければ、それを誤魔化す為の石鹸の匂いもない。漣の優しく安心する香りと、彼が普段から愛用している、タバコの苦い匂い。
心の奥底で凝り固まっていた不安が、ゆっくりと溶き解れていく。
「…漣、待たせてごめんね」
唇が離れた瞬間にそう言えば、またもや彼は目を開き、そして顔を綻ばせた。
「…必ず返ってきてくれるなら、待つのも存外悪くないね」
漣の返した意外な言葉に、私も自然と笑みが溢れた。体が少しだけ離れ、それでも手はしっかりと繋がったまま、私達は奥のリビングへと進んだ。