あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
撮影現場にて、及川白雪のクランクインが伝えられる。座敷や障子のセットが準備されたそこに足を踏み入れれば視線が集まる。
元より演者は圧倒的に男性が多い。その上艶やかな着物と島田結いの髪に付けられた幾つもの簪、それが歩く度にしゃらんと上品な音を鳴らして揺れる。そして実際の芸者さんも指導している方からの仕込みによる洗練された動きが加われば、人目を引くのは当然の事。
ドラマの都合上白塗りは首から下のみにはなるが、それでも私は元より色白の為それほど違和感は無い。
「よろしくお願いします」
本日からの参加となる為、何度か共演したり顔合わせした面々も多数いる中そう挨拶の声をかけた。
これから撮影シーンでは料亭にて会合を行う新選組の面々達を芸でもてなしたりお酌をしたりと、台詞自体はそれほど無い。
が、早朝からスタンバイして準備から衣装に着替えたりとそれなりの時間が経っており、既に一仕事終えた気分だ。
ただこういうことはよくある事で何も珍しいことじゃない。なのに何故今日に限ってこれだけ疲れているかと問われれば、これまでは居なかったやかましい存在が1人いるからだ。