あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
『もう恋人が居ますって本当の事言っちゃえば?』
諸々の相談も込めて萌葉に言えば、あっけらかんと返された。
仕事が終わり、着替えて帰ろうとしたところ私はまたもや佐原に捕まり執拗な誘いを受けた。丁度和泉さんは車を取りに出ていたし漣も前任のスタイリストに呼ばれて不在の中、私はついうっかり控室に入られてしまったのだ。
漣だと思って疑いもせずドアを開けた先にいた佐原の笑みを見た時の血の気の引き方は尋常じゃなく、咄嗟に萌葉に今すぐ電話をかけて欲しいと高速でメッセージを飛ばした。そして、今に至る。
『佐原健吾でしょ。前の現場でも付き纏われたって言ってなかった?』
「悲しいことに何回か共演があるんだよね…初めての時に共演者キラーって知らなくて愛想良くしちゃったのがまずかったかな」
『白雪、そういうの本当に疎いもんね。もっと寄ってくる奴は警戒した方がいいよって私、昔から忠告してたのに』
「う…」
誰彼構わず信頼するなと仲良くなってすぐの頃、萌葉に言われた言葉を思い出す。
誓って下心は無かったし、最初は現場で浮きがちな私に親切にしてくれる良い人だと思っていたのだ。
思えば最初からよく食事だのデートだののワードが飛び出していたような気もするけど、そういった方面での興味は一切無かったし、何より私でも知っているくらい当時から交際が噂されている人が何人もいたから冗談だと信じて疑わなかった。
都度断っているが気分を害した様子はないので放置していたが、私のクランクアップを目前に「1回だけでも」としつこく言ってきて非常に頭が痛い。