あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
慌ただしくかけていくマネージャーの背を見送れば、道具を片付けていたメイクさんに声をかけられる。
「ドラマ効果すごいね。いや、この間のグラビアの効果かな?」
「そうですね。ありがたい事に色々経験させてもらえるようになりました」
「白雪ちゃんは謙虚だなぁ。ドラマの役と全然違う。…あ、そうそう。言ってなかったんだけど今日…」
メイクさんが何か言いかけたところで開きっぱなしになっていたメイクルームにひょっこりと人影が現れ、ドアを軽く叩きながら声がかけられた。
「白雪ちゃん」
鼓膜を撫でる甘い声。そんなものを持つ人なんて、私の20年の人生で一人しか知らない。
「し、霜月さん…」
姿を認識するや否や気まずさで顔が引き攣った。
今日のスタイリストは全く別の人だと聞いていたのに、何故だ。
「同じ事務所の奴だったから無理言って変わってもらったんだよ」
「…人の心読まないでくれますか」
「だって顔に書いてるから。…女優さんなのに、ね?」
ぐっと声にならない音が喉から出る。