あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
愛の答え
私が明里を演じる最終日、その日も漣は別行動を申し出た。私と現場入りをして私の衣装の準備と着付けを行い撮影に向かう私を見届けた後、どこかにふらりと消えていった。
とはいえ仕事は仕事。台本の最終チェックを行い、私はその日1日かけて行った撮影も終盤となり、いよいよ最終シーンとなる「格子戸の別れ」に挑もうとしていた。
史実ではあやふやだが今回では山南敬助は明里を身請けする。そして2人で共に隊からの逃走を図るのだが、呆気なく沖田総司に取り押さえられてしまったのだ。
大して抵抗をしない山南は、明里と引き離されてしまった。
「『私は義を通しただけです。…誠の旗に誓うと決めたあの日から、私は自分の信念を通してきた。その結果がこれなら、悔いなどありません』」
山南敬助の言葉を聞き、隊士の面々の表情が歪む。死装束を見に纏う彼の顔は、死を目前にしながらも恐怖や後悔など一欠片もなく、ただただ真っ直ぐな目をしていた。
そんな彼らのいる部屋の窓から、私はゆっくりと格子越しに顔を出す。隊士の1人と目が合い、「最後だ」と山南は私の元へと促された。
「『旦那はん…』」
格子に手をかければ、山南役の男の手が添えられる。
「『明里さん、ありがとうございます。貴女のおかげで…私は救われた』」
「『いややわ、そんな、今生の別れみたいに…』」
「『……』」
「『…ほんまに、これでよかったん…?』」
男の笑顔を見た瞬間、私の目尻から涙が落ちた。私達は一度指を絡ませあい、そしてゆっくりと離れた。
障子が内からゆっくりと閉められる。けれど私はそこから動かず、格子を掴んだまま泣き崩れた。