あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
「——カット!」
監督の声と共に静寂が消える。途端に騒がしくなる現場に私は涙を拭い、セットから離れて映像を確認するスタッフ達を眺めた。
間も無くしてオッケーの声がかかり、これにて私と山南役の役者のクランクアップが決まった。
「お疲れ様でした」
そう言って穏やかな笑みを携え手を差し出してきた私の恋人役の男性と握手を交わす。
「こちらこそ、一緒にお芝居ができて光栄でした。ありがとうございました」
何度もお礼を伝え、間も無くして私と彼宛に花束を持ってきたスタッフからそれを受け取りその場の面々に挨拶をする。
私達が現場から引いても他の面々の撮影はまだ続く。そうした事も踏まえながら御礼と激励の言葉を述べ、その日の撮影は終了となった。
「お疲れさん」
私の演技を見守っていた和泉さんから労いの言葉がかけられる。小言が無いという事は及第点らしい。
私は和泉さんに花束を預けると、キョロキョロと辺りを見回した。
「漣はまだ戻ってないんですか?」
「いや、さっきまで居たと思うが…居ないって事は喫煙所じゃねえか」
「なるほど」
ひとまず戻ってきている事に安堵し、私は着替えてくると言って控室へ向かった。