あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
びくりと身体が跳ねたのを見逃さなかったのだろう、佐原はやっぱりねと肩を揺らした。
「随分と鬼気迫る感じだったから、なんとなく。…いい恋愛してるね、君」
「……」
悔しいかな、やはりこの男はいくつも上手だ。なまじこの業界で名を馳せ大河の主役を張れるだけの見識と実力を持っている訳では無い。誰しもが目を惹く容貌に能力が伴ってこその、この配役だ。
けれどこの嫌味はいささか気に障る。出来るだけそれを露わにしないようやり過ごそうとしたのだが、私が何かを言う前に身を寄せてきた。
「けど恋愛なんてさ、楽しんだもの勝ちじゃない?この業界で生きてくなら、そんないちいち重い恋愛してたらしんどいだけだよ」
「…何が言いたいんです?」
「何度も言ってるよ。白雪ちゃん、俺と恋愛を楽しんでみる気無い?」
「……」
酷くため息を吐きたい気持ちをグッと堪えた。誰かこの男の首根っこを掴んで引き摺って行ってくれないだろうか。心の中で中指を立てながら、私は「遠慮します」とはっきり答えた。
「そういうの向いてないので、私」
「やってみないと分からなくない?」
「!ちょ、」
スッと手が掬われ、思わず味を跳ねさせた。途端に全身に悪寒が走り、冷や汗と共に私は声を張り上げていた。
「…っ、私…!結婚を考えてる人がいるんです!」