あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
いつも私を甘やかす優しい声は酷く怒気を孕んでいた。見上げれば、声の通りの威嚇をする漣の顔が佐原を睨みつけていた。
「婚約者?」
馬鹿にしたような声が佐原から返される。まるでそんなの不可能だとでも言うように。
「ははっ!散々女を食い散らかしてきた男が、今更1人の女で満足出来るわけないじゃん」
あはは!と面白いものでも見たように笑う佐原だが、その目は欠片も笑っていなかった。
「あの及川白雪を落とせたってだけで、ちょっと浮かれちゃってるだけだろ?」
「…っ」
痛い所を突かれ、またもや視界が涙で歪む。漣を信じたいのに信じきれない私に、いい加減嫌気がさしそうだった。
「あの、って何?」
けれど漣は、あっけらかんと言い放つ。
「何が言いたいのか知りませんけど、俺にとってはこの子は唯一だ。今も昔も、白雪以外は毛ほども興味なんて無いね」
さも当然のように言い放つ漣に、初めて佐原の眉が寄った。
「根本的に考えが違うんですよ。あんたの世界の中心は自分なんだろうけど、俺にとってのそれは白雪だ。彼女が居るから俺の世界は成り立ってる、それだけ大事な存在なんですよ」
「…意味が分からない」
「でしょうね」