あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜


その部屋に通されれば予想通りのラグジュアリーな空間が広がっており息を呑む。

私はおずおずと漣に向き直り、手に持っていた物を差し出しながらようやく口を開いた。


「漣、あの、これ…」


漣は言葉を発する事なく私の手を包みながらそれを取った。小箱の中を開け、中から出てきたころんとしたケースをゆっくりと左右に開く。


「…っ」


そこには、恐ろしい程の輝きを誇る指輪が佇んでいた。


「な…なん、…これ、」


一体全体何がどうなってこうなっているのかパニックになり言葉がうまく紡げず、文章にならない声しか出せなかった。


「我慢出来なくて買っちゃった」


あまりに軽い口調に絶句する。買っちゃった、なんてそんな軽々しく言って良いような代物じゃない。

あり得ない大きさと輝きを放つその指輪は、見るだけで恐ろしい。仕事で高価な宝石を身につける機会はあれど、借り物として身につけるのと自分のものとして贈られるのでは意味が違い過ぎる。

私が顔を引き攣らせて硬直していると、それを察したのか漣はケースからそれを抜き取り、至極あっさりと左手薬指にはめた。

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