あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜


「…え?」


その涙を見た瞬間恥ずかしさが一気に消え失せて、代わりに胸の痛みが生まれた。


「どうして…泣いてるの?」


一筋こぼれ落ちたそれを拭えば、その存在を確かめるように漣が私の手を握った。


「…夢じゃ、ないかって」

「…え?」

「白雪が愛してくれて、君からキスしてくれて。…幸せな夢を見てるのかって」


私の手を握るそれはとても熱く、そして震えていた。


「ずっと君の背中を見てるみたいだったんだ。どれだけ呼びかけても、腕を引いても振り向いてくれなくて。ならいっそ傷つけて、痛めつけて、どんな手段を使ってでも振り向かせたくて」

「……」

「それでも無理だった。それならもういいやって…信じてもらえなくても、振り向いてもらえなくても、目の前にいてくれるなら、それだけでいいって…思うように、してたんだ」

「どうして、そんな…」


その先を言うのは憚られた。

漣は私が思っている以上に寂しがり屋なのだ。だから並の愛情表現じゃ伝わらない。それでいて、自分と同じくらいの愛情を求めてる。

ただでさえ世界の中心が私なんて言うくらい重い愛を向けてくるのに、それと同じだけ返して欲しいなんて横暴が過ぎる。

…なのに。今漣は、たかが私からのキスのひとつくらいで気持ちが昂って泣いている。よく分からない男だ、本当に。

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